「草の布」矢谷左知子さんを訪ねて

2003年2月13日 木曜日
 海岸沿いの小高い山の中腹に工房は建っていました。
ぎりぎり見える水平線と、(晴れた日には富士山も見えるらしい)
おおきな桜の木がうらやましい、気持ちの良いお住まいでした。
 矢谷さんは自ら刈り取った草で作品を織っています。
「草を織る」というとなんだかごわごわとして、大きな目の粗いモノ想像されるのではないでしょうか?
ところがこれが本当にしなやかで「美しい布」なのです。これがあの青々とした草だったとはとても思えない、美しい色と、輝きを放っているのです。
 矢谷さんが使っているのは、自生の苧麻と葛など、いくつかの行程を経て繊維を取っていますが、それはいわゆる「糸」ではなく、まだ草の部分を残した、矢谷さんの素材としての「草の糸」でした。
草の青みを残して仕上げた苧間の色は、何とも言えない美しい色をしていました。地に根を張って水分を蓄えていた時の色ではなく、少し乾いて、落ち着いた深みを出していました。
また、葛の繊維には不思議な光沢があり、織り上がった布は思わず手にしたくなる吸い込まれるような魅力がありました。
どの作品もシンプルに織られていて、サラッとした印象ですが、その穏やかで柔らかい表情のなかにもどこか力強さを感じます。
 矢谷さんの作業は、暑い夏の間に山に入り草を刈り、その後の行程も本当に根気のいる作業の繰り返しです。
誰もがもっと簡単に出来ることはないのかと考えたくなりますが、矢谷さんはそれをせず、毎年同じように自然の中へ入り、自分のものとして繰り返しています。
矢谷さんと話していると、とてもゆっくりとした大きなリズムを感じます。それはこの淡々と繰り返される作業を通して、彼女自身が自然界から受けているリズムなんだと、感じました。
この訪問で私はとても安心感を頂いて帰ってきました。
黙々と手を動かし作り続ける人は穏やかで、静かな強さを持っていました。
皆さんも矢谷さんの「草の布」に、是非会いに来てください。
3月21日から開催です。
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